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ADSS緊急セミナー
サッカー・オーストラリア代表のゲーム分析
~ 2006 World Cupで、オーストラリアは何をやっていたのか?~

 

世界トップレベルの指導者やコーチを招き、最新の情報を提供するのもADSSの重要な事業です。2007年7月19日には、U-17代表チームに帯同して来日したオーストラリア・サッカー協会の分析担当コーチ、ピーター・クラモフスキー氏を招いてセミナーを行いました。 クラモフスキー氏の貴重な話の中から、一部を抜粋してご紹介します(文:ADSS橘)。

 

Peter Cklamovski(ピーター・クラモフスキー)氏 27歳(当時)。
シドニーのクラブチームやクロアチアのプロチームでプレーしていたが、オフのトレーニング中に膝を負傷して選手生活を断念。現在、オーストラリアサッカー協会の分析担当コーチ、ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチを兼任。またスポーツの強豪高校、ウエストフィールド・ハイスクールのS&Cコーチを務めている。

 

sol_rug_1ナショナルチームといっても、トーナメントのとき、トレーニングキャンプのとき、ワールドカップのときといった時期の違いや、どういうレベルのナショナルチームであるかによっても、(分析の方法を)変えなくてはなりません。

 

今回はユースチームの大会で6チーム参加でしたが、1週間しかないので、3ゲームが毎日行われました。ということはデータ処理を早く行わなくてはならないし、早くフィードバックしなくてはなりません。24時間以内に次の試合が始まるのですから。そういう状態では、その場で入力ができないとこの仕事はできません。

 

この仕事は、自分のチームの戦い方を見ることができるし、相手のデータも同時に集めることができます。選手に対して、どういうチームと対戦するのかという情報を、ポイントを整理して与えることができますし、どこが弱いのか、どうやってそこをうまく突くことができるのか、どうやってベストの試合をやって勝つのか、ということを見せることができます。

(ここには掲載できませんが、ここでクラモフスキーさんは、実際に彼をはじめオーストラリアのサッカー代表チームが使っている分析項目「コード入力ウインドウ」の実物を見せ、そのデータの見方を説明してくれました。)

 

 

Q. 試合中は、どうやってデータをフィードバックしているんですか?

sol_rug_2前半の終わりではこういう形で渡します。プリントが出来ればプリントして渡しますが、新潟ではプリントできなかったので、この数字を紙に写して、走って持って行きました(笑)。後半の始まったあと、前半と後半でどういう違いがあるかを見ます。そして最後に1試合をつなぎ合わせたものを作って、データベースとして使います。

ハーフタイムのときには、コーチから質問をもらいます。さらにそれを選手に見せたいと思うときは、コーチ室まで来てくれというリクエストをし、データでなく映像そのものを見せる必要性があるときは、ビデオを見せることもあります。

この中からヘッドコーチが必要と思うものがあれば、そこを(ビデオで)見せます。たいていは相手チームのものを見せることが多いです。相手チームの弱いところ、そこをもっとつくにはどうすれはいいかを見せます。それは選手にとって、非常に大事なデータになります。選手によって理解する方法が違います。ある選手は読むほう、ある選手は聞くほう、しかしこういうビデオであれば、すべての選手が理解できます。ゲームの後にはいつもコーチのミーティングがあり、このデータからのインフォメーションを見ます。そしてその後、ヘッドコーチと選手を入れてのミーティングで、これを使ってヘッドコーチが選手に説明をします。

 

Q. 試合後は、どういうふうにデータをまとめているんですか?

だいたい試合が終わった後は自分たちの試合の見直しをやって、その後、次の対戦相手のデータを見ます。大会全体のスケジュールにもよりますが、まず見直しをしたあと次の対戦相手の分析を見て、その情報が選手の頭に吸収されるのを見計らって試合に臨めるようにスケジュールを立てます。

sol_rug_3こうして大会の終わった後何をするかというと、外付けのHDDにデータを入れ込みます。(オーストラリアには)11のナショナルチーム、つまりフル代表、五輪代表、U20があり、その他レベル別のチーム、女子、フットサルのチームなどもあります。ですからいろいろなプログラムが同時進行しています。

ひとつのゲームからの情報や、自分たちや相手のチームのデータベースを作り上げ、外付けのハードディスクに入れて、ヘッドオフィスに送ります。そこのテクニカルエリアにはライブラリがあって、ワールドカップのデータ、この試合のデータ、というようなハードディスクごとの整理をしています。それほど遠くない将来、協会がお金を使ってハブのようなものを作って、もっとこのデータを共有しやすくしようとしています。

もうひとつ付け加えるならば、協会にとって「選手を選ぶ」という面でこのシステムが役にたっています。特に若い選手のゲームで、候補者のいるチーム同士でお互いに試合をしているようなとき、その中から選んでいくのに使います。コーチもその場にいて、そのゲームの終わったあと、同じデータを見て比較します。そしてトレーニングキャンプに参加する選手を選び、さらに最終選考に残る選手を選んでいきます。

 

Q. プレーヤーごとの分析はしないのですか?

それはチームの要求によります。新潟の大会の場合は、個人個人のチェックは必要性を感じなかったのでやりませんでした。選手に多すぎる情報を与えてもマイナスですから、次のゲームに備えるのに必要なデータだけを渡していました。24時間しかないわけですから、チームのパフォーマンスに必要なものだけを取っていきました。

sol_rug_4ワールドカップのように次のゲームまでもっと時間があるような場合には、個人個人の分析をして、それから対戦相手にしてもそうですが、もっと細かいデータを取ってフィードバックすることもあります。それによって、もっと細かいことを特定することができます。例えば相手がどっちの脚で主にプレーしているかだとか、そういうのを見つけ出します。そうしてボールへの回り込みかたを変えたり、またどうすれば相手がボールを取りにくくなるかを考えたりします。試合がどういう形で行われるか、どういう日程で行われるかによって、どう情報を整理しようかと考えます。多すぎる情報を渡してしまわないよう「どういう情報を渡すか」を吟味することが大事だと思います。

 

Q. あなたはストレングスコーチでもありますが、その面ではどうデータを活かしているのですか?

まず誰が一生懸命プレーしているか、実際のゲームの中で誰がどの位置にいるのかを見ることができます。どのエリアにいてどういうことをしているか、何が起こったのかを見ることができるわけです。最初の10分、最後の10分でどんなことが起きたか、それを見ることができます。 これが試合開始10分の時点のデータ、それからこれが20分経過…というふうに出てきます。どこで疲労が出てきたのか、この数字が答えてくれるわけです。35分のところで何か起きているのか、そういうところで実際にビデオを見て、どういう形でこの試合に臨んでいたかをチェックして、実際の動きがレイジーになってないかをチェックすれば、その原因を見つけやすくなるわけです。

 

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