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U17国際サッカー大会リポート
〜現場で見た、オーストラリア代表チームのビデオ分析の実際〜

初出:2006年7月15日(ADSS日記)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA「誰が見にきても歓迎、説明してあげるよ。」

新潟で開催中の「第10回国際ユースサッカー」、オーストラリアU-17代表の分析担当コーチPeter Cklamovski(ピーター・クラモフスキー)さんが、ハーフタイムにSportsCode(スポーツコード)のデータをチェックしているところです。

私が新潟に行ったこの日(15日)、後半の途中から激しい雨になりました。スタンドというには狭すぎる、ほんの少しの屋根付きの客席の中、Cklamovskiさんはゲーム中、リアルタイムでSportsCodeを使ってデータ入力とビデオ編集(これを「コーディング」と言ってます。SportsCodeの記事にはよく出てきますので、覚えておいてください。)を入力しています。

話それますがこの球技場(ではなく「多目的広場」という名前ですが)、バス停から徒歩25分、帰りは2時間に1本のバスに乗るため、ずぶぬれになりながら歩きましたが、それでも実際に行き、Peterさんの分析を見、話した価値がありました。

コーディングの中心は両チームのボールポゼッション、そこにどんどん細かな情報を入れていってました。確かに「シュート」「パス」でコーディングしていたら流れはぶつ切り…このやり方、サッカーにはいいですね。よくSportsCodeをサッカー向けにデモしていると「これじゃ流れがわからないよ!」というコーチがよくいるのですが、これなら流れを見せつつ、さらに条件に合った映像もすぐにピックアップして見せられます。

聞いてみるとこれが、フル代表のアナリストRon Smith氏と決めた、今のオーストラリア代表の・・・つまりはワールドカップの時にオーストラリアが日本を分析するのにも使っていた・・・、標準的なやりかただそうです。分析に使う40個ほどの項目はすべてオリジナル・・・コーチとスタッフの要請の中から決められたものです。日本のチームのように、分析会社の作った項目と数字をただもらっているなんてことはありません。必要な項目を自分たちで考え、ゲーム中にリアルタイムで収集し、ビデオの映像とともにフィードバックしています。

しかも、そんな大事なものを快く見せてくれることにまたびっくり! 試合中には時々、コードマトリックス(SportsCodeのサイトをご参考に)を作って、ここがポイントだというように指さし、その映像を再生してくれたのですが、残念なことにサッカーをやっていない私にはその項目の意味がわかりません(略語だし、ビデオに入るのでお互い無言)。う~ん、うちの会社のサッカー担当も来て欲しかったな。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA「誰が見にきても歓迎、説明してあげるよ。」とCklamovskiさんは言ってくれていたのですが、サッカー協会や対戦相手の関係者は近づいてきませんでした。聞いてみると、前の日もそうだったと。もったいないなあ。つい先月のことはもう大昔のこと、それとも、東京から遠く離れたここでは他人事・・・?

ゲームによってはハーフタイムに画面上で統計データとピックアップした映像をコーチに見せることもあるそうですが、今日はそこまでやらないとのこと。マトリックスの数字を紙に写し取って(その様子が写真です)、コーチと話していました。

アナリストとS&Cコーチの二役

試合後に話をしていてびっくり、実はCklamovskiさんは、このU-17代表のストレングス&コンディショニング(S&C)コーチでもあるんだそうです。試合前は選手たちのウォーミングアップを担当していたので、試合開始ぎりぎりになって客席に現われていました。

「もちろん上のチーム(代表)では、S&Cコーチと分析担当のコーチは別々だよ。」とのことですが、人がいないから兼任しているというわけでもなさそうです。Cklamovskiさんは、オーストラリアではストレングスコーチとして、トップレベルのスポーツ高校ウエストフィールド・スポーツハイスクールなどの指導をしているとのこと。その一方では分析の手腕も買われていて、「条件次第なので、まだシークレットだけど」ということですが、プロとしてのオファーが舞い込んでいるそうです。してみると、「何でも見ていいし、セミナーでは何でも話すよ。」というのは、自分の伎倆に対する自信の表れのように思えてなりません。

そういえば以前、日本のあるラグビーチームにいたSportsCode担当のスタッフ(ニュージーランド人)も、アナリストとS&Cコーチの二役を務めていました。しかもどちらもハイレベルに。データ処理の早さ深さは今でも印象に残ってますし、私の聞くところでは、トレーニングコーチとしての評価も日本でもNZでも高かったように思います。

日本ではどうでしょう? 今までこの仕事をしてきて、トレーニングコーチに「自分の仕事の幅が広がりますよ。」とSportsCodeのような道具を勧めても「オレには必要ない。」と目もくれないのがオチでした。このCklamovskiさんや、さきのラグビーチームのスタッフのことを考えても、「仕事の幅や自分の可能性を狭めているなあ・・・。」と思ってしまうのです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA話が逸れたついでにもう一つ、トレーニングコーチの中には「自分がやっていない競技のトレーニングは教えられない。」と言って、「野球」だ「ラグビー」だと仕事を限定する人もいますが、それもまた「可能性を狭めているなあ・・・。」と思わずにはいられません。やっていない競技であっても、その隙間を埋めるのが人間の想像力・学習力であったり、それでもまだある隙間を埋めるのがこうした「デジタルツール」だと思うのですが・・・。幸い、いまADSSを含めうちに在籍しているスタッフに、そういう考えの人がいなくてよかったと思います。

本題に戻って、セミナーではどんなことを話してほしい?と聞かれたので、具体例というのはみんな興味があるし応用が利くものだから、いつ、どうやってデータを取り、どうフィードバックしているのかという具体的な話、そして後は出席者とコミュニケーションを取りながら質問に答えていって欲しいと伝えました。でも東京に来たら、まず彼自身の話がいちばん聞きたいですね。

夜に時間が取れるかもしれないが、チームの予定がわからないので…と言うので、時間が取れそうだったら連絡を、取れなかったら東京でゆっくり話そうと答えてホテルで待ちました。連絡が来たのは翌日早朝「深夜まできょうの試合のためのミーティングが続いてました。」とのことでした。大会に参加していた日本のチームも、やはりデータを見ながら深夜まで対策を練っていたんでしょうか?

(報告:橘 肇)

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